「すずめの戸締り」徹底考察 隠された神と秘密のメッセージ

今回はすずめの戸締りを徹底考察します。

2022年11月11日に劇場公開された「すずめの戸締り」。

そんな「すずめの戸締り」には隠された神の存在が見え隠れします。

「君の名は。」「天気の子」に続く第三作目。

前作と同様に日本神話のエッセンスをふんだんに取り入れた「すずめの戸締り」。

登場するキャラクターから隠された神を解き明かしていきます。

ここまで「すずめの戸締り」について神道と神様をベースに深堀りした内容は他にはないと思います。

ほとんどの人が気づいていないことを取り上げて新海誠が本当に伝えたかったメッセージを紐解いていきます。

映画のネタバレを含んでいるのでご注意ください。

すずめの戸締りのあらすじ

東北の震災で親を失い叔母と2人で宮崎県の港町に暮らす女子高生の岩戸鈴芽(いわとすずめ)。

ある日登校中に宗像草太(むなかたそうた)に遭遇します。

「この辺りに廃墟はないか?」と質問されます。

草太にひとめぼれした鈴芽は地元の廃墟街を紹介。

学校をサボって草太を追いかけます。

探している内に奇妙な扉を見つけた鈴芽。

その扉を開けてしまい封印されていた巨大なミミズを解き放ってしまう。

草太と鈴芽は何とか扉を閉めてミミズを再度封印をすることに成功。

そして各地の廃墟の扉の向こうから大地震を引き起こす災いが現れること。

草太がその災いを防ぐべく扉を閉めて鍵をかける閉じ師であることを知ります。

鈴芽が偶然封印を解いたことで生まれたネコのダイジン。

ダイジンの持つ不思議な力によって草太は小さな椅子の姿に変えられてしまうのです。

草太を元の姿に戻してもらうべくダイジンを追いかける鈴芽と草太(椅子)。

彼らは九州を飛び出して日本各地を巡っていきます。

その先々の廃墟では再び地震を引き起こすとされる巨大なミミズが発生。

椅子になってしまった草太に代わって鈴芽は閉じ師の仕事を担います。

行く先々で出会った人々に助けられながらも災害を防ぐことになる鈴芽。

その行く先では忘れられてしまったある真実が彼女を待っているのでした。

すずめの戸締りに隠された神

宗像草太

主人公の一人の宗像草太(むなかたそうた)。

宗像という名字が表すように宗像三女神がモチーフとなっています。

宗像三女神は田心姫(たごりひめ)、湍津姫(たぎつひめ)、市杵嶋姫(いちきしまひめ)の三女神のこと。

宗像三女神は交通安全の神様。

「すずめの戸締り」は日本各地を渡り歩くロードムービーだと新海誠は語っています。

そんなロードムービーには交通安全の神様である宗像三女神はぴったりなのです。

宗像三女神の市杵嶋姫は瀬織津姫と同一視される神様でもあります。

瀬織津姫については『瀬織津姫』の記事をご覧ください。

草太は猫のダイジンによって3つ脚の椅子に姿を変えられてしまいます。

この3つ脚の椅子は神武天皇を導いた八咫烏がモチーフ。

草太が鈴芽を導く役割にはぴったりと言えます。

八咫烏については『八咫烏』の記事をご覧ください。

八咫烏は太陽神と導きの神という神格を持っています。

それと同じ神格を持った神様がいます。

それがサルタヒコ。

サルタヒコは天孫降臨でニニギノミコトを道案内した神様です。

サルタヒコも太陽神であり導きの神という神格を持っているため八咫烏=サルタヒコとなります。

後から日本に来たニニギノミコトを案内したということは日本に古来から住んでいた神様だということ。

日本神話には日本という名前の由来となった日本に古来から住んでいた太陽神がいます。

それがニギハヤヒ。

サルタヒコと同じ太陽神の神格を持っているためニギハヤヒ=サルタヒコ。

つまり八咫烏はサルタヒコでもありニギハヤヒでもあるということ。

草太にはニギハヤヒと瀬織津姫という夫婦神が隠されているのです。

ニギハヤヒについては『ニギハヤヒ』の記事をご覧ください。

岩戸鈴芽

すずめの戸締りのヒロインである岩戸鈴芽。

鈴芽という名前はアメノウズメから来ていると新海誠は語っています。

そして岩戸は天岩戸を連想させます。

アメノウズメが岩戸閉じこもった天照を外に連れ出すのが天岩戸伝説。

ですが天岩戸伝説にはこんな話があるのです。

岩戸にアマテラスが閉じこもったのではなく閉じ込められた。

そして別の神様とすり替えた。

その時に閉じ込められた神様こそがニギハヤヒ。

ニギハヤヒはサルタヒコと同一神だという話は先ほどしました。

さらにサルタヒコの妻はアメノウズメです。

そしてニギハヤヒの妻は瀬織津姫。

つまりアメノウズメとは瀬織津姫のことだと解釈できます。

そうなると天岩戸伝説の解釈は大きく異なります。

天岩戸に閉じ込められた夫を格好が乱れようともなりふり構わず救い出そうとした瀬織津姫。

その様子を見て手伝うこともなく大笑いする神々。

瀬織津姫の努力も虚しく夫のニギハヤヒは力尽きて別のアマテラスへとすり替わってしまった。

天岩戸伝説は陰謀渦巻く悲劇の夫婦の物語だとも解釈できるのです。

天岩戸伝説の話から岩戸という名字はニギハヤヒをモチーフにしていると考えられます。

鈴芽にもニギハヤヒと瀬織津姫という夫婦神が隠されているのです。

ミミズと日不見の神

すずめの戸締りにはミミズという大地震を引き起こす災いが登場します。

作中では災いと言っていますがおそらくは神様のことです。

その神様の正体は東京の後ろ戸の位置からわかります。

東京の後ろ戸があった場所は皇居の地下。

その場所は鬼門。

鈴芽が旅を始めたのは宮崎県であり最終的に東北に辿りつきます。

このルートは裏鬼門から鬼門。

そして鬼門に封じられているのが国常立。

国常立は日月神示によると日本列島そのものだと語られています。

世界一平に泥の海であったのを修理固成(つくりかため)たのは国常立尊(くにとこたちのみこと)であるぞ

日本の国はこの方の肉体であるぞ。

国土拝めと申してあろうがな

作中でミミズは「日本列島の地下にある構造線のようなもの、そこに溜まるエネルギー」だと説明されています。

その設定は国常立そのものです。

日月神示については『日月神示』の記事をご覧ください。

国常立は龍神であり国土(土壌)なので地龍(じりゅう)です。

動物性生薬の中に地龍と呼ばれるものがあります。

その地龍という薬はミミズを乾燥させたものなのです。

つまり作中のミミズとは国常立のこと。

作中ではミミズを封印するために草太が祝詞を唱えます。

かけまくしもかしこき

日不見(ひみず)の神よ

遠(とお)つ御祖(みよや)の産土(うぶすな)よ

久しく拝領(はいりょう)つかまつったこの山河

かしこみかしこみ

謹んでお返し申す

その意味は次の通り

言葉にして申し上げるのも畏れ多い

日不見(ひみず)の神よ

遠いご先祖のこの土地の守護神よ

長らくお預かりして治めておりましたこの山河を

畏れながら畏れながら

謹んでお返し申しあげます

この祝詞の中に登場する日不見の神。

日不見は火水とも読み替えることができます。

古神道において火水とは火(カ) 水(ミズ)と読めるため森羅万象の神様のこと。

さらに日不見はひふみとも読めます。

そしてひふみが登場する祝詞がひふみ祝詞。

ひふみ祝詞は鎮魂法で使われる祝詞です。

そしてこのひふみ祝詞を誕生させたのがアメノウズメ。

アメノウズメが天岩戸に隠されたアマテラスを出す時の舞で唄いました。

ひふみ祝詞については『ひふみ祝詞』の記事をご覧ください。

ひふみ祝詞が登場するものに日月神示があります。

日月神示は別名ひふみ神示。

この日月神示の中の神様が国常立になります。

以上のことから日不見の神とは国常立のことだと考えられるのです。

新海誠が伝えたかった本当のメッセージ

日本に災いをもたらすミミズの正体は国常立。

そんなミミズを鎮める日不見の神も同じく国常立だということがわかりました。

そもそも神様に対抗できるのは同格の神様。

なので当然と言えば当然だと言えるかもしれません。

ではそんなミミズを封印していた草太や鈴芽とはどんな存在だったのか。

彼らも実は国常立だったのです。

草太と鈴芽にはニギハヤヒと瀬織津姫の夫婦神が隠されています。

ニギハヤヒは太陽神であるため火。

瀬織津姫は水神なので水。

2人を合わせると火水。

つまりは日不見の神である国常立のこと。

さらに火の漢字は5つの点が結ばれて五芒星。

水の漢字は6つの点が結ばれて六芒星。

5+6で11でニホンを表し日本の国土である国常立のことです。

「すずめの戸締り」の公開日は11月11日。

ここにも11という数字が登場し国常立を意味しています。

陰の瀬織津姫と陽のニギハヤヒが陰陽統合し完全体となった神様こそが国常立。

草太と鈴芽も国常立だったからこそ国常立であるミミズを鎮めることができたのです。

陰陽統合し本当の自分を知る。

そして自分を自分自身が鎮める。

戸締りと聞くと何かを封印しているように感じるかもしれませんがその意味は逆です。

戸締りとは神様にその土地をお返しすること。

それは作中の祝詞の「謹んでお返し申す」からもわかります。

戸締りとは神様の立場からすると土地を解放することです。

新海誠が本当に伝えたかったこと。

それは自分自身の嫌な面にも向き合って陰陽統合し本当の自分を取り戻す。

そして自分自身で最後は決着をつける。

自分で自分を救うこと。

日本人はこれまで嫌なことに蓋をしてきました。

見るべきことから目を背けてきました。

それは2023年の現在でも同じ。

様々なことが判明しているのにも関わらずそれらの声を無視して目を背ける。

でももう目を背けちゃいけないタイミングにまで来ました。

誰かの責任にするのはもう止めないといけません。

自分を救うのはいつでも自分です。

今はどんなに悲しくてもね、この先ちゃんと大きくなる。

だから心配しないで。

未来なんて怖くない。

これからも誰かを大好きになるし大好きになってくれる誰かともたくさん出会う。

今は真っ暗闇に思えるかもしれないけれどいつか必ず朝が来る。

あの日「行ってきます」と言ったまま空けられた扉を閉じる物語。

言えなかった「おかえり」を言うための物語が「すずめの戸締り」だったのではないでしょうか。

すずめの戸締りの徹底考察のまとめ

今回はすずめの戸締りを徹底考察しました。

どんなに絶望していても必ずそこには光があります。

そんな光は誰からもたらされるのか?

それは未来の自分。

鈴芽も絶望している時に誰かから光をもらいました。

その時は誰かもわからなかったけど最後に気づく。

あの時の人は自分。

未来の自分。

そうして未来は大丈夫だったと気づくのです。

たとえ今は絶望していても自分と和解して許して光に包まれている自分が未来にはいる。

その未来の自分と心の中で出会って希望をもらったときにもう一度立ち上がることができる。

だからこそ今をがんばろう。

今を生きる日本人が何をするべきか?

辛い過去を忘れることなく鎮めそれを未来につなげて扉を開く。

それこそが「戸締り」。

今後こそ「戸締り」をして決着をつけないといけないですね。